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弁護士 小田 康夫
2019.01.9

われわれは巨人の肩に乗っていて、ただ、その巨人の正体を知らない

年末年始に「進撃の巨人」を全巻読みました。おすすめです。

さて、 昨年を振り返ると、セクハラ・パワハラに係る研修を行ったり、雑誌にハラスメントを題材とする寄稿をしたり、労働審判をやったりと、労働事件に関わることが多かった1年でした。年末年始でまとまった時間ができたので「ワークルール」(労働者や使用者に関わる法制度)について何冊か本を読んでみました。読んだ感想として、「ワークルール」が、時代を経て、どんどん複雑になってきているな、と感じます。

歴史を振り返っても(拙い私の世界史の知識で恐縮ですが)、
第1幕~奴隷制度や資本家が台頭した時代~
 第2幕~労働者が団結して資本家に対抗した時代~
  第3幕~労働者の置かれた環境全般が充実していった時代~
があったように思います。

市民が、第1~第3幕のような時代の中で、労働者の権利を徐々に獲得していった時代背景と異なり、日本だと、多くの労働者と使用者に関わる法制度が、戦後、ドラスティックに、変化しました。



もともと日本の最初の労働者保護の制度とされる、工場法。
 1911年(明治44年)、誕生しました。
  しかし、制定当初から規制が極めて乏しいとの批判も多かったようです。
   1947年(昭和22年)、労働基準法が成立しました。
    数度の法改正や判例の蓄積を経て、現在に至っています。

労働者の医療分野では、
 大正11年 健康保険法 日本初の社会保険立法。但し対象は現場労働者。
  昭和13年 国民健康保険法 農村などを対象に医療保険制度創設。但し任意加入。
   昭和33年 国民健康保険法全面改正 
    労働分野から、対象が拡大され、国民皆保険が実現しました。
 
労働者の年金分野では、
 昭和14年 船員保険法 日本初の年金制度。
  昭和16年 労働者年金保険法 陸上の現場労働者にも対象拡張。
   昭和19年 労働者年金保険法から厚生年金保険法へ。事務職員や女性にも拡張。
    昭和34年 国民年金法。
     同じく、労働分野から、対象が拡大され、国民皆年金が実現しました。

近年では、例えば「過重労働」に係るトピックだけ見ても、
 平成11年 電通事件を受けて、労災認定を容易にする方向へ
  平成23年 通達で、どの程度の長時間労働が労災認定されるかを明確化。
  平成31年4月1日 働き方改革で時間外労働の上限規制へ。

ただ、「われわれのワークルールが労働者保護へ一貫して進んだ」と捉えることも難しくなっています。
例えば、
法は、中間搾取を禁止していましたが、例外を認めました。
 いわゆる派遣法創設
残業代発生のない、適用除外規定があります。
 いわゆるホワイトカラーエグゼンプション
働き方改革で「時間外労働の上限規制」と、いわば抱合せで出てきた、「高度プロフェッショナル制度」により、日本の割増賃金システムに新たな例外を創設しました。また、労働力供給が不足していると言われた介護分野等に、海外から労働力を輸入する施策も実施されます。

このように現代の「ワークルール」は、どんどん仕組みが複雑化しています。
今の労働者保護が十分なら、国際競争力維持のため、労働者の保護が拡張することと引き換えに、例外が創設され、さらに例外が拡張することも、必要だと言えるかもしれません。



ところで、
あなたが何かの「ゲーム」を考えたとき、
どんな「ルール」にするでしょうか。

どんなゲームでもそうですが、
ルールがシンプルであれば、
とっつきやすく、参加は容易でしょう。

逆に、難解なルールであれば、
そもそもゲームに参加したくないでしょうし、
ルールが変わったことが、プレイヤーにとって、
正しい方向なのか、誤った方向なのか(運営側にとって有利なものか)
を問うことも困難となってしまいます。



話を戻して、現実の「ワークルール」はどうでしょう。
「労働」というものが、およそ20歳で強制的に参加させられる「ゲーム」だとすれば、この「ゲーム」のルールは決して簡単ではありません。「ワークルール」の世界は巨大かつ難解で、おそらく多くの人がルールを熟知せずにゲームに参加しています。ルールを学ぶ場所も限られていますし、例外も多くてわかりにくい。

こんなことを書いたのも、どうも現状の巨大な「ワークルール」が、適切な方向性や変更後のビジョンが不明確なまま、なし崩し的に変更され、どんどん複雑になってしまっているように感じているからです。巨人の肩に乗って、見えた遠くの美しい景色も、じっくり観察しておかないと、忘れてしまいますし、巨人の足が切られ、巨人の背がいつの間にか小さくなっても、気づかなくなります。巨人が倒れてから騒いでも後の祭りです。

最初に挙げた第3幕の後。後世で
第1幕
 第2幕
  第3幕
   第4幕~悲劇~気づかぬうちに、健康で働きやすい職場が失われた時代~

との評価を受けないよう、「ワークルール」の正体をまず知ることが、重要でしょう。