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弁護士 鍛冶 孝亮
2018.09.13

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1.平成30年9月6日午前3時7分、北海道胆振地方中東部を震源とする地震が発生しました。気象庁は、この地震を「北海道胆振東部地震」と定めました。
  今年は北海道命名150年の節目の年となりますが、奇しくも北海道内で初めて震度7(厚真町)を観測した年になってしまいました。
  厚真町では、多数の方が亡くなり、現在も多くの方々が避難所での生活を強いられている状態になります。被災された方には心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を心からお祈りします。
  釧路地方や根室地方は、今回の地震で大規模停電による被害を受けました。
  土砂崩れ、建物倒壊、液状化現象などの被害と比較すると被害の程度は小さいのですが、停電が起こったことで慌てふためいてしまいました。
  災害時の教訓とするために、今回の地震被害のことを書いていきます。  

2.地震発生当時、私は震源地である胆振地方中東部から約200キロ離れた釧路市にいました。
  子どもが夜泣きをしたこともあり、たまたま起きていました。
  道東は地震が多い地域でもあり、これまで釧路沖地震などの大きな地震を体験しています。
震度を確認するためにテレビなどを付けようとしても全く付きませんでした。
  部屋の電気も全く付かず、停電であることに気づき、ネットで情報を確認しました。
  すると胆振地方で地震が発生したこと、普段地震が少ない札幌市でも相当大きな揺れがあったこと、そして北海道全体に停電が発生していることがわかりました。
  それ以上の情報は得られず、そのときは朝までに停電は復旧していると考え寝ることにしました。

3.しかし、朝になっても電気が一向につかず焦りを感じました。
  どうして震源地から離れている釧路でも停電が起こったのか、この停電はいつ復旧するのか、震源地を含めて現在北海道はどのような状況なのかを確認しようとしたのですが、テレビは映りませんし、ネットでも断片的な情報しかわかりませんでした。
  私は、普段車に乗っているときはラジオを聞いておりますので、ラジオなら聞くことができると思い、電池で動くCDラジカセを使いラジオを流し、初めてこの停電の原因(地震で苫東厚真火力発電所が緊急停止したことで道内の電気の供給と需要のバランスが崩れ、他の火力発電所も停止し、大規模な停電が発生したというもの)を知ることができました。

4.停電の原因は把握したものの問題はいつ復旧するのかです。
  ラジオで聞いていても、いつ復旧するのかはよくわかりませんでした。
  そんな中、ネット上で経済産業大臣が6日朝、大規模停電について「数時間以内で電力供給のめどを立てるよう北海道電力に指示した」と述べたというニュースを見ました。
  今考えるとあくまでも大臣が北電に指示したというニュースに過ぎないのですが、そのときは、数時間後には電気が戻ってくるものだと思い込んでしまいました。数時間も電気が止まったのは生れて初めてでしたので、非常に不安な状態であり、自分の都合の良いように情報を解釈してしまったのだと思います。
  その後、北電の社長の記者会見があり、「完全復旧には1週間以上要する」と発言したというニュースをラジオで聞き、数時間で復旧すると思っていたため非常に焦りを感じるようになりました。1週間以上も電気が使えないとなると、仕事はもちろんですが、日常生活も大きな支障ができるためです。
  とにかく食料等を確保しなければならないと思い買い出しにでかけました。
  開店時間前にもかかわらず、近所のスーパーやドラックストアには、既に多くの人が並んでいました。
入店制限もあり、順番が来るまで並んでいると、電気が止まったため、数時間後には水道も止まると話している人の話が聞こえてきました。確かに電気は止まっていましたが水道は使えるようになっていたため最悪の事態ではないと思っていました。しかし、並んでいる人は、水道センターの電気も止まっているので、ポンプが動かず水も出なくなってしまうという話をしているのです。
ラジオではこのような話はしていませんでしたが、万が一水道が止まるとさらに大変なことになるため、飲み水などを確保したり、トイレの水を確保するためにお風呂場に水を貯めるなどもしなければならずと考えるようになりました。実際、並んでいる人の中に、買い物を早く切り上げて家に帰って水を貯めなければいけないと話している人も見受けられました。
その後、釧路市から自家発電があるため水道が止まることはないという発表がなされ、水道については心配がなくなりました。

5 6日の夕方には、北電から復旧作業が順調に進んでおり、道内の各地域で電気が復旧しているという発表がなされ安堵しました。  
電気の復旧を待ちわびていたところ、自宅は6日中には復旧せず、7日の夕方に復旧しました。
  約1日半の停電でしたが、生まれて初めての長時間の停電であったため、不安の中、様々な情報に飛びつきました。
 テレビも見ることができないため重宝したものはラジオです。思い起こすと、ラジオでは北電や自治体の発表を中心に紹介し、慎重に情報を提供していたと思います。聞いている人を元気づけるため歌なども流していました。
 並行してネットでも情報を得ていました。情報の量でいえばネットに軍配が上がりますが、そもそもネットは非常に繋がりにくい状態となっており調べたいときに調べることができなかったほか、充電が心もとなくなり長時間調べることができませんでした。そして、情報の量が多く正直何が正しい情報なのかわからなくなりました。
 「北電で働いている知り合いによれば送電線に被害が出ており復旧は当面先」と、北電の発表とは真逆の投稿もありました。どこかの誰かが好き勝手に書いていると無視すればよいのですが、不安になっている状態ですので、私を含め疑心暗鬼になった人も多いと思います。
 今回の地震をきっかけに、政府や関係機関の発表を待ち、むやみに情報を詮索し自分が望んでいる情報を鵜呑みにすることは慎むことの重要性を改めて認識しました。

6 関東大震災から現在に至るまで、大きな災害があるとデマが拡散します。
残念ながら、今回の震災でも、「厚真町にいる自衛隊からの情報」「地響きが鳴っているので大きい地震が来る可能性が高い」「推定5~6時間後」などのデマが拡散し、国や北海道が冷静に対応するよう呼びかける事態になりました。
  今の時代は、ネットがあるためデマもあっという間に広まります。特にSNS上では、デマの情報を見た人が自身の投稿欄で紹介すると、その投稿を見た人もさらにその投稿を紹介するなどして広まっていきます。
  デマだとわかって紹介する人は少ないと思いますが、そのデマが震災時の人の不安を煽るようなものであればあるほど、心配になり誰かに知らせなければならないと思い込み、結果としてデマが拡散していくと思います。
  今はネットで情報を仕入れ、それを第三者へ発信することもできます。この情報は正確か、誰かを不安にさせるものではないのかを選択していく大切さを実感しました。

7 最後になりますが、今回の地震による停電で事務所(釧路事務所、中標津事務所)は、6日と7日の両日とも業務ができず臨時休業をさせていだきました。関係者の方々に御迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。