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弁護士 鍛冶 孝亮
2018.08.16

忘れられたお金の行方

1.お金の保管方法は、大きく分けて2つあります。
 1つは銀行に口座を作り預金する方法、もう1つは自宅で他の人に見つからないように保管する方法(いわゆるタンス預金)です。
 タンス貯金のメリットとしては、お金が必要になったときに銀行の窓口やATMで引出しに行く必要がないこと、手元に現金があることで安心感を抱くことができるという点があります。一方、デメリットとしては、盗難のリスク、火災や自然災害での消失のリスク、保管場所を忘れてしまう紛失のリスクなどがあります。
使っているわけではないのにお金が失ってしまうリスクが高いことを考えると、タンス預金をしている人は多くはないとも考えられます。
 人から聞いた話なのですが、とある地域で水害が発生し多く人が自宅から避難した際、手持ちの現金がないと思われる被災者のために銀行が移動式のATMを避難所に設置したところ、多額の現金(避難の際に持ち出したタンス預金)を預け入れる人が続出したようです。
 また、現金がゴミ捨て場などから発見されたというニュースを聞くことが多いと思います。現金をゴミとして捨てることは考えられないため、なぜゴミ捨て場から現金が見つかるのだろうと前々から疑問に思っていましたが、これはタンス預金の現金であるとすると説明がつきます。
 自宅に多額の現金を保管している人が亡くなった場合、遺族がそのことを知らなければ、家財道具などの中身を確認することなく不要なゴミとして捨てられることもあります。また、自宅を解体したときの廃棄物もゴミになります。ゴミの中に多額の現金が保管されていても、誰も気づかなければそのまま捨てられてしまいます。ニュースになっているのは、たまたま現金が捨てられているのを発見できたケースであり、実際は誰の目にも触れることなく、ゴミと一緒に焼却されている現金も多いと思います。
  なお、遺品回収業者の人が遺品の中から多額の現金を見つけたというケースも多いです。
このように、タンス預金をしている人は思っているよりも多いです。
第一生命経済研究所の調査によれば、国内のタンス預金の総額は約43兆円という結果が出てきます。

2.タンス預金をする人は、どうしても手元に現金を置いておきたいという理由のほかに、銀行にお金を預けても雀の涙にもならない利息だから預金する意味はなく、万が一銀行が破綻した場合には1000万円しか保障されてないのだから(ペイオフ)、銀行ではなく自宅で保管したいと考えているのかもしれません。
 しかし、タンス預金では、盗難リスク、火災や自然災害で消失するリスク、保管場所を忘れたり誤って捨ててしまうなどで紛失するリスクがありますし、保管者が亡くなった場合、せっかく貯めたにも関わらず誰にも使われることなくゴミとして焼却されてしまうリスクもありますので、せいぜい自宅で保管するとしても自然災害など万が一の事態が起こったときの当面の費用のために数十万程度の現金に留め、百万円を超える現金を自宅で保管するべきではないと思っています。
 ちなみに、普通預金や定期預金ではなく、利息が全く付かない決済用預金で預け入れると預け入れた全額保護の対象となるためペイオフ対策に有効です。
 自分のお金が盗難や自然災害などでなくなってしまうことを考えて生活するよりも、銀行に預金するほうが、手間はかかるかもしれませんが、必要に応じて下ろしに行ったほうが、精神的にも良いですし、何より使っていないのになくなってしまうという事態を避けることができます。

3.タンス預金ではなく銀行でお金を保管したとしても、どの銀行にいくら預けたのかを忘れてしまうこともあります。
 さて、今日のコラムの本題になりますが、銀行にお金を預けたものの、預けた人もその存在を忘れてそのままになっている預金はどうなってしまうのかということを紹介していきます。
 使われていない預金を活用するために、休眠預金等活用法(正式名称:民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律)が平成28年に成立しました。
 この法律は、休眠口座(預金者が名乗りを上げないまま10年間放置された預金)に指定され、払い戻されていないお金が年700億円のペースで増え続けているため、これを民間の公益活動のために使おうという目的で作られました。
 金融庁が示している活用方法としては、休眠口座の預金を、以下のような支援を行っている民間の公益団体に助成するというものです。
 (活用分野)
 子どもの支援、就労支援、ホームレスやDV被害者への住宅支援、介護サービス支援、地域の産業推進の支援
 現在、指定活用団体の公募を開始しており、指定活用団体の申請受付期間は、平成30年10月1日から同月5日までの期間となっています。 

 (参考HP)
(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuminyokin/kyuminyokin.html
(内閣府)
 http://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/shitei/shitei_index.html#otoiawase

 国の予算ではなく、預金者の預金を民間公益活動の原資とすることについては、反対の意見もあると思いますが、休眠口座となり使われることなく死に金となっているお金を民間の公益活動のため生き金として利用することは有意義であるだと思います。
交付金の交付は来年以降の話になりますが、有効に活用されることを願っています。
 休眠口座に指定された場合、預金が引きだせなくなると心配される方もいるかもしれませんが、各銀行で必要な手続を取れば払い戻されます(利息付のものであれば利息も付されます)。

4.銀行にお金を預ければ、タンス預金のデメリットは回避されるし、万が一休眠口座となってしまってもそのお金が公益的活動に使用されることになります。
  お金を保管する方法として、預金が一番安心であるとは思いますが、今後その安心を得るためにお金が必要になるかもしれません。
 現在は、銀行で口座を開設しお金を預かってもらっていても費用はかかりませんが、今後は「口座維持手数料」を支払わなければならなくなるかもしれません。現在、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンクが口座維持手数料(個人で、1口座につき年間数百円から数千円)の導入を検討しているようです。
 どうしてお金を預けているだけなのに手数料がとられるのかという感覚をもつ人が多いと思いますが、銀行としては人件費や口座の管理維持費用、ATMの設置や運営費用がかかっており、海外では口座維持手数料を取ることが一般的です。
 そうはいっても、これまで無料だったわけですから、口座維持手数料を徴収される趣旨が広く一般に理解されるのには時間がかかるでしょう。
 そうなってくると、「手数料を支払うくらいであれば自宅で現金を保管する」として、タンス預金をする人が増えてくるかもしません。
 しかし、口座維持手数料を支払っても、タンス預金ではなく銀行預金するほうが安全だと考えています。
 タンス預金には前述したリスクがありますし、口座維持手数料が導入されたことで、多く人が現金を自宅で保管しているだろうと考える犯罪者による空き巣が多くなると予想されます。
 せっかく貯めたお金を一円も使うことなく、盗まれたり自然災害で消失してしまっては、無念の一言に尽きるとしかいいようがありません。
 そして、前述したように、万が一預金の存在を忘れてしまっても、その預金は有効に使われることになります。
 口座維持手数料は、お金という大切な財産を安心して保管するための必要経費と考えると納得はできると思います。
 今のところ、銀行にお金を預けても、口座維持手数料は取られませんので、タンス貯金をされている方は、安心のためにも銀行で預金されることをおすすめします。