弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2018.05.18

1日あたり70分

1. 先日、とある公設事務所を特集したニュース番組を見ました。
  公設事務所とは、弁護士過疎解消のために、日本弁護士連合会、弁護士会、弁護士会連合会の支援を受けて開設・運営される法律事務所のことです。
  番組では、過疎地域で弁護士事務所を運営するのは想像以上に厳しい状況にあり、その理由の1つに、裁判所などへの移動の機会が多く、これが負担になっていると紹介されていました。
  この点は非常に共感できましたので、今回は弁護士業務と移動のことを紹介したいと思います。

2.弁護士は、主に事務所で仕事(法律相談、打合せなど)をしていますが、裁判や調停の代理人となった場合には、裁判所に行く必要があります。
  また、刑事事件の弁護人となった場合には、被疑者被告人と接見するため、警察署や刑務所、裁判所へ行くことになります。
私の事務所がある中標津町から、釧路地方裁判所(本庁)までは約90キロ、釧路地方裁判所根室支部までは約80キロ、標津の裁判所までは約20キロ離れています。
  仮に法定最高速度である時速60キロで自動車移動した場合、釧路までは往復3時間、根室までは往復2時間20分、標津までは往復40分かかる計算になります。もっとも、市街地などでは時速60キロで走行することはできませんので、実際の移動時間はもっとかかります。
  私の場合、月数回、釧路、根室、標津の各裁判所へ行っています。
  そのこともあって、自動車では年間かなりの距離を移動しています。
  今年の3月車検を受けましたが、平成28年3月から平成30年3月までの間で、約6万2000キロ走行していました。仕事のために移動距離を5万キロとした場合(ほとんど仕事のために移動しているため、実際はもっと多いと思いますが)、年間の距離は2万5000キロとなります。
2万5000キロを365日で割ると、1日あたり約70キロ移動している計算になります。
1キロ1分で移動すると仮定した場合、もし移動がなければ、1日にすると70分、1年(2万5000分)にすると17日と約8時間を事務所などでの仕事のために使うことができたということになります。
なお、車移動の場合、移動中は全く仕事ができないという話だけではありません。北海道の場合、冬には雪道を走行することもあり、凍結した路面を走行する際は非常に神経を使います。また、エゾシカが道路に突然出てくる道を走ることもあり、その場合も神経を使って運転します。肉体的精神的に疲れます。

3.弁護士は、「法律相談→依頼」という流れで事件を受任します。
裁判所が開いているのは、平日の9時から17時までですので、この時間帯に裁判に出頭したりや移動に費やし、一日の大半事務所を不在にするとなると、裁判がある日は、新しい相談を受けることが難しくなります。
また、受任した案件について打合せが必要となり、事務所にいる数少ない日に打合せの予定を入れると、ますます新しい相談を受けることができません。
弁護士に相談を希望される方は、できる限り早めに相談したいという人が大半ですので、可能な限り早めに相談の予定を組むようにはしているのですが、移動による影響で、相談を行うのが遅くなってしまうこともあります。
このような状態ではありますが、移動がなく一日中事務所で仕事ができる日に、集中的に法律相談を入れることや17時以降に相談を入れるなどして、相談を希望された方に迷惑をかけないよう対応しています。

4.裁判所がない場所で弁護士業務を行うのは大変なのだから、弁護士事務所は裁判所がある場所に開設すべきという意見があるかもしませんが、法的トラブルは裁判所がない場所でも発生しています。
  もし、裁判所がある自治体にしか弁護士事務所がなければ、住民の方は遠方から弁護士事務所に足を運ばなければなりません。弁護士事務所までの公共交通機関が未整備だったり、自動車を運転できない人であれば、弁護士事務所に行くことを諦めて、弁護士に相談や依頼をすれば解決できたトラブルであっても、泣き寝入りをしてしまうこともあります。
  市民の権利擁護の手助けをするために、裁判所がない自治体にも弁護士事務所が開設され、日々業務を行っているのです。
私もそうですが、裁判所がない自治体で業務をしている弁護士は、裁判の期日をできるだけ同じ日にまとめて入れてもらうことや民事裁判の電話会議(事務所で電話により裁判に参加する)を利用し、できるだけ移動の負担が生じないように業務を行っているかと思います。
  先ほども紹介しましたが、裁判所がない場所でも弁護士を必要としている人はいるわけですから、距離の負担に負けず、スケジュールの効率を図るなどして、弁護士を必要としている住民の方々のために尽力します。