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弁護士 鍛冶 孝亮
2018.02.22

北海道命名150年の節目に

1.平成30年は明治維新から150年目といわれていますが、蝦夷地が北海道と命名されてから150年目の年にもなります。ちなみに北海道の名付け親とされているのは、江戸時代の終わりから明治にかけて活躍した探検家の松浦武四郎です。
  (参考HP:北海道と松浦武四郎)
https://hokkaido150.jp/matsuuratakeshiro/

 150年を記念して、様々イベントが行われるようですが、多くの道民が気になっているのは、平成30年に生まれた北海道内の新生児に対し、昨年まで北海道日本ハムファーターズでプレーをしていた大谷翔平選手のサインをデザインした野球ボール(幼児向けポリウレタン製)をプレゼントするという企画ではないでしょうか。
 日ハムで活躍し大リーグへ移籍した大谷選手の記念ボールですし、平成30年に生まれた子どもしかもらえないため、かなり貴重なものといえます。
実は昨年の12月に長男が生まれたのですが、平成29年中のため、この記念ボールはもらいそこねました。その代わり、長男が大きくなったら一緒に日本ハムの試合を観戦し、ホームランボールをゲットできればと思います。
 いろいろなイベントも楽しいのですが、150年という節目の年に、北海道の歴史を振り返ることも大切だと思います。
 今回は、あまり知られておらず、もしかしたら北海道命名150年目を祝うことができなかったかもしれない歴史を紹介します。

2.「釧路・留萌ライン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
 第二次大戦中の話になりますが、ソ連は、第二次大戦後、釧路から留萌までの結ぶラインを引き、そのライン以北を占領し、北海道の分割統治を考えていました。釧路市や留萌市はソ連が統治することを予定していたとのことです。
 第二次大戦後、ドイツでは、西ドイツと東ドイツに国家が分断されました。そして、ベルリンの壁が崩壊するまで統一がなされませんでした。
 朝鮮半島も朝鮮戦争後、北朝鮮と韓国という2つの国に分かれ民族が分断されました。この2つの国は現在も統一されていません。
 もし北海道をソ連が占領していたら、現在も北海道の一部はロシアの国の一部となっており、北海道命名150年を祝うことができる状態でなかったと思います。

3.ソ連による北海道の占領統治が実現しなかった経緯を説明します。
 昭和20年8月、日本はポツダム宣言を受諾し終戦となりました。
 一方ソ連は、日本に原爆が投下された直後、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、満州、樺太、千島列島に侵攻してきました。
 終戦直前、千島列島の最北端にある占守島(しゅむしゅとう)には、北方から侵攻で北海道本島を防衛するために、陸海軍の精鋭部隊が残留していました。
 ポツダム宣言の受諾により戦争が終わったはずでしたが、8月17日の深夜、突然ソ連軍が占守島に攻め込んできたため、島の部隊は自衛のために戦闘を開始しました。戦闘は日本軍が有利なまま進んだのですが、日本軍は大本営の命令により、停戦、8月23日に武装解除をしました。
 その後、ソ連は8月28日に択捉島に上陸、9月1日には国後島、色丹島に上陸、9月3日には歯舞群島に上陸し、9月5日まで北方領土を占領していきました。
 日本が連合国との降伏文書に調印(休戦協定)したのは9月2日となっておりますので、ソ連は日本と休戦協定を結んだ後も、占領行為を行っていることになります。北海道の占領を目論んでいたソ連ですが、アメリカが反対したため北海道の一部を占領することを諦めたといわれています。
 はたしてアメリカが反対したからだけで諦めたのでしょうか。占守島の戦いのことを知っている多くの人が意見するように、日本軍が占守島でソ連の侵攻を必死に防いだからこそ、ソ連の千島列島の侵攻が当初の予定通り進まず、降伏文書の調印までに北海道へ上陸できなかったため、北海道は占領されなかったのではないかと私も考えています。
 8月15日、終戦の知らせを聞いて、戦争が終わって家族のもとに帰ることができると思った方も多いと思います。しかし、ソ連の突然侵攻による戦闘で命を落としたり、ソ連の捕虜になってシベリアに抑留され抑留中に亡くなり、日本に戻ることができなかった方のことを考えると胸が痛くなります。
占守島の戦いは、北海道を守った戦いであり、多くの人に知ってほしい歴史です。
 この話について興味を持たれた方は、作家浅田次郎さんの『終わらざる夏』という作品を読まれることをお勧めします。

4.150年というのは、日本の歴史に比べたら短いと感じるかもしれません。歴史の教科書ではわずか数ページで紹介が終わってしまうものかもしません。
  しかし、今回紹介した話のように、教科書には載っていないため、多く人が知らない歴史もまだまだあると思っています。
  これからの北海道をますます発展させていくためには、北海道の発展に尽力された先人たちに感謝するとともに、歴史を学び北海道に対する想いを深めることも必要だと思います。
  150年という節目の年になりますので、今年は北海道の歴史などを積極的に勉強し、紹介できる話がありましたらコラムに書きます。