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弁護士 鍛冶 孝亮
2017.12.14
2017.12.14
私、お酒で失敗しないので
1.年末年始は、忘年会、クリスマス、お正月、新年会などの行事があり、お酒を飲む機会が多いと言われます。
お酒は「百薬の長」と言われており、適度な量であれば健康を害することなく、リラックスによるストレスの発散ができるほか、コミュニケーションツールとも言われている一方、飲みすぎると健康を害するだけでなく、取り返しのつかない失敗をして、地位や名誉を失うこともあります。
最近のお酒にまつわる出来事を紹介すれば、泥酔した弁護士がタクシー内で暴行を振った事件や日馬富士による暴行事件(酔った状態での暴行と報道されています)があります。宮崎市では、市の職員が飲酒運転をしたことで、宮崎市が市職員に対し、1週間職員同士での飲酒を控えるよう通知したという出来事もありました(繁忙期の飲食店にとっては売上に響いたとのことです)。
弁護士の仕事をしていると、お酒に関するトラブルもよく取り扱います。
例えば、酔っ払って喧嘩をして相手に怪我をさせたという刑事事件の弁護をすることも少なくありません。
本人と接見したときには、素面の状態となっており、深く反省していることがほとんどです。酔っ払ってあまり覚えていないという人もいますし、酔っ払い気が大きくなってしてしまったという人もいます。
当然のことながら、「酒の上の過ちなので…」という言い訳は通用しませんので、今後お酒とどう付き合っていくのかも含めて、真剣に反省してもらう必要があります。
日本人の大半は、お酒に弱い遺伝子をもっていると言われておりますので、ドラマ「ドクターX」の大門先生のセリフのように、「私、お酒で失敗しないので」と自信をもって言える人はなかなかいないのでしょうか。
2.私の場合、昔からお酒がほとんど飲めませんでした。
飲み会などがあるときには、付き合いだと思い無理して飲んでいましたが、プライベートでは一切飲みません。
飲むといっても、ビールであれば小さいコップの半分くらい飲めれば良いほうで、それも1時間とか2時間かけて飲むのです。
一口飲んだだけでも顔が真っ赤になるとよく指摘されていましたし、ゆっくり飲まなければ気持ち悪くなりました。眠気が襲ってきて、飲み会に参加した人と会話することも困難になることも多々ありました。
実は今年の夏、飲み会がありほんの少しだけしかお酒を飲まなかったにもかかわらず、冷や汗が出て寒気を感じ、体調が悪くなったことがありました。
その出来事があった後、インターネットでお酒と体のことを調べていたら、アルコール体質についての遺伝子検査があることを知りました。
パッチテストといって、エタノールを浸した綿を皮膚にあてて、赤くなる程度を調べてお酒に強いのかどうかを調べる検査のことは御存知の方も多いと思います。この遺伝子検査では、口内の粘膜などを研究所に送り、アルコールについての体質検査をしてもらうものです。
自分がどのような体質を知りたいと思い、早速検査をしてみることにしました。検査キットをインターネットで購入し(約5000円)、キットが届いたら粘膜を採取し返送し、結果レポートを待ちます。
3.検査結果を説明する前に、アルコールの分解の仕組みについて一般的な話をさせていただきます。
アルコールが体内に入ると、第1段階として、アセトアルデヒドに分解されます。第2段階として、アセトアルデヒドが酢酸に分解され、最終的には二酸化炭素と水に分解されます。
第1段階ではアルコール脱水素酵素の働きが関係し、第2段階ではアルデヒド脱水素酵素の働きが関係します。
アルコール脱水素酵素には、低活性型、活性型、高活性型があり、アルデヒド脱水素酵素には、活性型、低活性型、非活性型があるようです。
私の結果レポートを確認すると、アルコール脱水素酵素は高活性型で、アルデヒド脱水素酵素は非活性型でした。
一見すると、アルコール脱水素酵素が高活性型なので、お酒に強いとも思えますが、そうではなく、結果は完全下戸タイプと判断されています。
そもそも、お酒を飲むと酔っ払って気持ちが良くなるというのは、体内に入ったアルコールのうち肝臓で分解しきれないものが脳まで運ばれ、脳が麻ひするためといわれています。
私の場合、アルコール脱水素酵素は高活性型ということで、体内に入ったアルコールがアセトアルデヒドに分解されるのは早いことになります。
一方で、吐き気や頭痛などを発生させる有毒物質されるアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素が非活性型ということであるため、分解に時間がかかり長い間体内に留まります。
簡単に説明すると、お酒を飲んだら、酔うよりも先にアルコールはすぐに分解されるが、毒素であるアセトアルデヒドがなかなか分解されないことになります。
お酒を飲んで気持ちが悪くなることはあっても、酔って気持ち良くなったことはこれまでありませんでしたので、今回遺伝子検査をしてその理由がよくわかりました。
最終的な検査結果は、「お酒を受け付けない完全下戸タイプ」と判断されています。
アセトアルデヒドは発がん性が認められ、体内のアセトアルデヒドの値が高まるとがんになるリスクが高くなるとのことですので、健康のためにもこの検査以降お酒は一切飲んでいません。飲み会でお酒を飲まない方が、気持ち悪くなったりしませんので、楽しく過ごせるようになりました。
自分の体質を科学的に知ることもできましたし、健康の面からもこの検査をして良かったと思っています。
残念なことといえば、美味しい料理をお酒と共にいただくとか、それぞれの土地の名酒を味わうなどができないのは体質であることがわかったことでしょうか。ただ、お酒を受け付けない人は、アルコール依存症にならないと言われていますし、お酒が強い人に比べ(強い人が一切飲酒しない生活習慣を送っていたとしても)、痛風にもなりにくいという研究発表もあり、健康的なメリットはあるかと思います。
4.私のようにお酒を受け付けない体質でなくても、検査をしてみる意義はあると思います。
例えば、アルコール脱水素酵素が低活性型で、アルデヒド脱水素酵素が活性型の体質の人は、アルコールが体内に残りやすいため酔いやすく、アセトアルデヒドの分解は早いので気持ち悪くなりにくいため、つい飲みすぎてしまうので注意が必要であるなど、健康の点からも、お酒が飲める人であっても遺伝子検査を行うことは有効だと思います。
また、大学入学や就職直後の歓迎会のときに、お酒を強要されて、急性アルコール中毒となり最悪死亡に至ったという事件もありますが、検査をすることでアルコールを受け付けない体質であることが事前にわかっていれば無理してお酒を飲むことはせず、このような痛ましい事件はなくなるかもしれません。
5.冒頭にも書きましたが、お酒の上の失敗は、これまで築き上げてきたもの失うことになりかねない重大な結果に繋がります。
飲酒運転の厳罰化にもあるように、酔った上でのトラブルには、社会的にも厳しい目が向けられていますし、「酒の上の過ち」という言い訳は論外です。
極論すれば、お酒で失敗しないためには、お酒を飲まないことが一番です。
しかし、お酒は、ストレスの発散やコミュニケ―ションの潤滑油としても必要なものともいえますので、自身の体質を踏まえ適度な飲酒をすることが、お酒で失敗しないことに繋がるのではないでしょうか。
お酒は「百薬の長」と言われており、適度な量であれば健康を害することなく、リラックスによるストレスの発散ができるほか、コミュニケーションツールとも言われている一方、飲みすぎると健康を害するだけでなく、取り返しのつかない失敗をして、地位や名誉を失うこともあります。
最近のお酒にまつわる出来事を紹介すれば、泥酔した弁護士がタクシー内で暴行を振った事件や日馬富士による暴行事件(酔った状態での暴行と報道されています)があります。宮崎市では、市の職員が飲酒運転をしたことで、宮崎市が市職員に対し、1週間職員同士での飲酒を控えるよう通知したという出来事もありました(繁忙期の飲食店にとっては売上に響いたとのことです)。
弁護士の仕事をしていると、お酒に関するトラブルもよく取り扱います。
例えば、酔っ払って喧嘩をして相手に怪我をさせたという刑事事件の弁護をすることも少なくありません。
本人と接見したときには、素面の状態となっており、深く反省していることがほとんどです。酔っ払ってあまり覚えていないという人もいますし、酔っ払い気が大きくなってしてしまったという人もいます。
当然のことながら、「酒の上の過ちなので…」という言い訳は通用しませんので、今後お酒とどう付き合っていくのかも含めて、真剣に反省してもらう必要があります。
日本人の大半は、お酒に弱い遺伝子をもっていると言われておりますので、ドラマ「ドクターX」の大門先生のセリフのように、「私、お酒で失敗しないので」と自信をもって言える人はなかなかいないのでしょうか。
2.私の場合、昔からお酒がほとんど飲めませんでした。
飲み会などがあるときには、付き合いだと思い無理して飲んでいましたが、プライベートでは一切飲みません。
飲むといっても、ビールであれば小さいコップの半分くらい飲めれば良いほうで、それも1時間とか2時間かけて飲むのです。
一口飲んだだけでも顔が真っ赤になるとよく指摘されていましたし、ゆっくり飲まなければ気持ち悪くなりました。眠気が襲ってきて、飲み会に参加した人と会話することも困難になることも多々ありました。
実は今年の夏、飲み会がありほんの少しだけしかお酒を飲まなかったにもかかわらず、冷や汗が出て寒気を感じ、体調が悪くなったことがありました。
その出来事があった後、インターネットでお酒と体のことを調べていたら、アルコール体質についての遺伝子検査があることを知りました。
パッチテストといって、エタノールを浸した綿を皮膚にあてて、赤くなる程度を調べてお酒に強いのかどうかを調べる検査のことは御存知の方も多いと思います。この遺伝子検査では、口内の粘膜などを研究所に送り、アルコールについての体質検査をしてもらうものです。
自分がどのような体質を知りたいと思い、早速検査をしてみることにしました。検査キットをインターネットで購入し(約5000円)、キットが届いたら粘膜を採取し返送し、結果レポートを待ちます。
3.検査結果を説明する前に、アルコールの分解の仕組みについて一般的な話をさせていただきます。
アルコールが体内に入ると、第1段階として、アセトアルデヒドに分解されます。第2段階として、アセトアルデヒドが酢酸に分解され、最終的には二酸化炭素と水に分解されます。
第1段階ではアルコール脱水素酵素の働きが関係し、第2段階ではアルデヒド脱水素酵素の働きが関係します。
アルコール脱水素酵素には、低活性型、活性型、高活性型があり、アルデヒド脱水素酵素には、活性型、低活性型、非活性型があるようです。
私の結果レポートを確認すると、アルコール脱水素酵素は高活性型で、アルデヒド脱水素酵素は非活性型でした。
一見すると、アルコール脱水素酵素が高活性型なので、お酒に強いとも思えますが、そうではなく、結果は完全下戸タイプと判断されています。
そもそも、お酒を飲むと酔っ払って気持ちが良くなるというのは、体内に入ったアルコールのうち肝臓で分解しきれないものが脳まで運ばれ、脳が麻ひするためといわれています。
私の場合、アルコール脱水素酵素は高活性型ということで、体内に入ったアルコールがアセトアルデヒドに分解されるのは早いことになります。
一方で、吐き気や頭痛などを発生させる有毒物質されるアセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素が非活性型ということであるため、分解に時間がかかり長い間体内に留まります。
簡単に説明すると、お酒を飲んだら、酔うよりも先にアルコールはすぐに分解されるが、毒素であるアセトアルデヒドがなかなか分解されないことになります。
お酒を飲んで気持ちが悪くなることはあっても、酔って気持ち良くなったことはこれまでありませんでしたので、今回遺伝子検査をしてその理由がよくわかりました。
最終的な検査結果は、「お酒を受け付けない完全下戸タイプ」と判断されています。
アセトアルデヒドは発がん性が認められ、体内のアセトアルデヒドの値が高まるとがんになるリスクが高くなるとのことですので、健康のためにもこの検査以降お酒は一切飲んでいません。飲み会でお酒を飲まない方が、気持ち悪くなったりしませんので、楽しく過ごせるようになりました。
自分の体質を科学的に知ることもできましたし、健康の面からもこの検査をして良かったと思っています。
残念なことといえば、美味しい料理をお酒と共にいただくとか、それぞれの土地の名酒を味わうなどができないのは体質であることがわかったことでしょうか。ただ、お酒を受け付けない人は、アルコール依存症にならないと言われていますし、お酒が強い人に比べ(強い人が一切飲酒しない生活習慣を送っていたとしても)、痛風にもなりにくいという研究発表もあり、健康的なメリットはあるかと思います。
4.私のようにお酒を受け付けない体質でなくても、検査をしてみる意義はあると思います。
例えば、アルコール脱水素酵素が低活性型で、アルデヒド脱水素酵素が活性型の体質の人は、アルコールが体内に残りやすいため酔いやすく、アセトアルデヒドの分解は早いので気持ち悪くなりにくいため、つい飲みすぎてしまうので注意が必要であるなど、健康の点からも、お酒が飲める人であっても遺伝子検査を行うことは有効だと思います。
また、大学入学や就職直後の歓迎会のときに、お酒を強要されて、急性アルコール中毒となり最悪死亡に至ったという事件もありますが、検査をすることでアルコールを受け付けない体質であることが事前にわかっていれば無理してお酒を飲むことはせず、このような痛ましい事件はなくなるかもしれません。
5.冒頭にも書きましたが、お酒の上の失敗は、これまで築き上げてきたもの失うことになりかねない重大な結果に繋がります。
飲酒運転の厳罰化にもあるように、酔った上でのトラブルには、社会的にも厳しい目が向けられていますし、「酒の上の過ち」という言い訳は論外です。
極論すれば、お酒で失敗しないためには、お酒を飲まないことが一番です。
しかし、お酒は、ストレスの発散やコミュニケ―ションの潤滑油としても必要なものともいえますので、自身の体質を踏まえ適度な飲酒をすることが、お酒で失敗しないことに繋がるのではないでしょうか。