弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2017.11.15

誰が子どもに『愛』を教えるのか

1.『僕たちがやりました』という作品(原作は漫画で、最近テレビドラマも放送されました)があります。
  あらすじですが、高校生3名とその高校のOB1名は、軽いイタズラのつもりで、不良高で有名な高校に進入しプラスチック爆弾を仕掛け爆発させたところ、プロパンガスに誘爆して多数の死傷者を出す事件を起こします。事件は大きな力で揉み消されることになるのですが、事件に関わった高校生らは自分たちが犯した罪に葛藤することになります。
  この作品の中で、父親の愛情を一切受けてこなかった登場人物の一人が、父親に向かってこのような言葉を放ちます。
「親が教えなかったら、誰が子どもに『愛』を教えるのか」
「愛を知らない俺に生きている価値はあるのか」
  普段であれば、良いセリフだなと聞き流していたと思いますが、10月31日、釧路少年友の会の活動で帯広少年院を見学した直後だったせいか、このセリフは胸に突き刺さりました。

2.釧路少年友の会とは、少年事件の付添人や少年の更正福祉の援助協力事業などを行っているボランティアの団体です。主に家庭裁判所の家事調停員の方々が中心となって活動をされており、弁護士も会員となることができます。
  私も弁護士登録してすぐに会員となりました。 年1回、帯広少年院を見学し、少年院での矯正教育の内容の説明を受けたり少年たちと一緒にジンギスカンを食べて交流を深めるという活動もしております。また、少年院に図書の寄贈もしています。
  私は、昨年はじめて帯広少年院を見学したのですが、非常に良い体験だったため、今年も参加することにしたのです。

3.少年院の見学では、まず担当の方から、少年事件や少年院についての説明を受けました。現在、少子化の影響もあるのか、全国的に少年事件の数は減ってきているようです。また、少年事件を引き起こす少年は、粗暴な性格持っているというイメージがあるかもしれませんが、最近では発達障害により他人とのコミュニケーションを図ることが難しいとされる少年が犯罪を起こすケースも増えているようです。現在、帯広少年院に入院している少年の半数程度は、発達障害を有しているのではないかとのことでした。
  少年院では、非行の内容や本人の性格や発達障害の程度などを踏まえて、矯正教育計画を作成し、きめ細かい教育を実施しているとのことでした。
  矯正教育の内容として印象的だったのは、挨拶をする、感謝の気持ちを伝えるなどの指導が教育プログラムとなっているとのことです。
  挨拶する、お礼を伝える、自分がされて嫌なことは人にもしない、嫌なことがあっても暴力ではなく話合いで解決することなどは、人が社会で生きていくための基本的なことであり、多くの人は、両親を中心とした家族、学校の先生、友人などから学んでいきます。
  しかし、親から虐待を受けた子や、親が暴力を用いてしつけをした子は、このような基本的なことを教えてもらえないまま成長してしまい、他人とのコミュニケーションをうまく図ることができず、ときには衝突し犯罪を引き起こしてしまうこともあります。虐待を受ける原因やコミュニケーションを図ることができない原因に発達障害も関係していることもあるようです。
  少年院を出て社会復帰をするにあたって、少年の自己肯定感を高めることや他人とのコミュニケーション能力の養うことが重要であり、そのような矯正教育を実施しているとのことでした。

4.少年院に入院してくる子どもたちの多くは、親から愛情を受けられず育った子が多いようです。
もちろん、親に問題があったり、事故などで親がいない子のすべてが、前述した基本的なことをわからないまま成長するわけではありません。ただ、その子の親と同等又はそれ以上に、その子に愛情を注いでくれるその他の親族だったり学校などの先生などが存在しなければ難しいと思います。
  少年院の見学後、子どもが健全に育っていくためには親の愛情は必要ではないか、子どもは誰から愛情を受けたいと思っているのかなど考えているときに、冒頭のセリフを聞き胸に響いたのです。

5.今回の見学では、3名の少年と同じ鉄板でジンギスカンを食べました。
  どのような事件を起こしたのかや家族構成などは聞くことができないルールがあったため、少年たちの境遇を知ることはできなかったのですが、もしかしたら親から虐待を受けていた子もいたかもしれないと思い辛くなりました。
  少年たちに私が弁護士をしていると伝えると、法律に興味があると言ってくれて、裁判のことや法律のことを聞いてくれた子もいましたし、株などに興味があるので勉強していると言ってくれる子もいて、積極的に話をしてくれました。
僅かな時間ではありましたが、非常に良い交流をすることができました。
  また、少年院の法務教官は、まさに少年の親代わりとなり愛情を注いで更生に向けた教育をされていると感じました。
  来年も是非、帯広少年院を訪れたいと思っています。