弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2017.08.16

終戦記念日に『この世界の片隅に』を思い出して

1.8月は日本人にとって平和を考えるための特別な月だと思っています。
  毎年8月6日は広島で、9日には長崎で、原爆で犠牲になった方々の冥福を祈るともに、核兵器廃絶と恒久平和の実現を世界に訴えるための原爆慰霊祭が開催されます。
  そして、毎年8月15日には、全国戦没者追悼式が開催されます。追悼式には、天皇皇后両陛下が御臨席され、三権の長(内閣総理大臣、衆議院及び参議院各議長、最高裁判所長官)のほか各政党代表や地方公共団体代表が参列し、戦没者の遺族の方も多数参列され、先の大戦の全戦没者に対し、国を挙げて追悼を行います。
  今年は戦後72年となり、戦争を体験された方の高齢化も進み、戦争の記憶をいかに次の世代に語り継いでいくのかが問題となっています。

2.毎年8月になると、戦争の記憶を風化させないために、テレビではいろいろな特集や戦争に関する映画が放送されます。
昨年、『この世界の片隅に』というアニメ映画が公開されました。昨年11月に公開されてから、口コミで評判が広がっていき、観客動員200万人を突破し、現在も一部の映画館でロングラン上映中とのことです(DVDは今年の9月に発売されるとのことです)。
  広島市で生まれ育ち絵が得意な主人公すずは、昭和19年に18歳で呉に住んでいるとある青年のもとに嫁ぐことになります。嫁いだ後何気ない日常を送っていましたが、徐々に戦争が進み、食料や物資が不足し、何度も空襲に襲われることになります。空襲で大切なものを失いながらも、日々の生活を前向き過ごしていた中、昭和20年8月6日を迎えることになります。これが簡単なあらすじになります。
  この映画を観ると、70年前の当時、戦争という特殊な状況下で人々がどのように毎日を生きていたのかをリアルに感じることができました。映画の中では、戦時中であるとは思えないほど平穏な日々や人々が笑顔で生活していく様が描かれています。一方で戦争により大切なものが失われていく様も描かれています。大切なものを失っても希望をもって明るく生きていく姿が描かれていることで、温かさも感じる作品になっています。
  主人公の声を演じている女優のんさんは、「時代は違っても、喜びや悲しみは一緒」と感じるようになったと述べており、映画を観て「戦時中の話だけれど、私たちが今につなげられる」、「生きる時代が違うだけで、一緒なんだと思った」という感想を述べている若い人もいるとのことです。
  今の時代の私たちも共感できる日常が戦争によって失われていく辛さがスクリーンから伝わってくるため、涙が止まらなくなった方も多いようです。
  この映画の舞台となった時代ですが、若い人たちにとっては、祖父母や曾祖父母が生きてきた時代です。現在の日本では考えられないほど、死と隣り合わせの時代を生き抜き、戦後の日本の復興のために尽力された祖父母たちに感謝の気持ちを感じることができる映画であるとも思います。

3.ドイツの哲学者イマヌエル・カントは、『永遠平和のために』という著作の中で、平和は人間にとって不自然な状態であり、戦争状態が自然の状態であると述べています。そして、だからこそ平和状態を積極的に創らなければならないとも述べています。
  日本では、ここ最近北朝鮮によるミサイル発射問題で緊張が高まっている状態が続いています。
  近年では、集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が成立するなど日本の国防に関する体制にも変化が生じつつあります。
  どのような手段で平和状態を創造していくのかについては、個人によって考え方が違ってくる難しい問題であると思いますが、平和状態の創造にあたっては平和の実現を願う気持ちを持つことが不可欠だと思います。
  平和の実現を願う気持ちが失われないよう、特別な月である8月に、これから何十年先であっても先の大戦のことを語りついでいく必要があると思います。
そして、戦後何年たっても語り継がないといけない時代を描いた作品であると評されている『この世界の片隅に』は、毎年8月に見続けていきたいと思います。