弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2017.04.13

スポーツと法律

1.スポーツをするのも観るにも好きな人、自らはしないけど観るのは好きな人、自らもしないし観ない人、様々な人がいると思います。

もともとスポーツに興味がなかったとしても、アスリートの活躍や生き様を特集したテレビ番組に見入ってしまい、そのスポーツ競技に興味を持つこともあると思います。

  先日はWBCが行われ侍ジャパンが活躍し(惜しくも準決勝で敗れてしまいましたが)、来年にはFIFAワールドカップが行われ、そして東京五輪は3年後に迫ってきています。

  このようにスポーツの話題が尽きない世の中ですが、平成29年3月末、中標津町文化スポーツ振興財団からの依頼で、スポーツと法律に関する講演を行いました。

  今回はその講演でも話をしたスポーツと法律のことについて書いていきます。

2 スポーツに怪我はつきものと言われています。

  ところで、路上で口げんかをしているときに、怒りで頭に血が上り相手方を一方的に殴り怪我をさせてしまった場合、傷害罪が成立することもありますが、スポーツ競技の中で相手に怪我をさせてしまったとしても、ルールに従って行われている限り、傷害罪は成立しないとされています。

例えば、ボクシング、プロレス、空手などの格闘技では、参加者は双方に攻撃を繰り出します。その中で、出血したり骨折などの怪我をすることも珍しくありません。どうしてスポーツの場合、怪我をさせても責任を追及されないのでしょうか。

  スポーツは社会的に認められている正当な行為であるため、仮に怪我をさせてしまっても違法とは認められないという考えが根本にあるためです。また、スポーツ活動には危険が内在しており、その危険を承知の上で競技に参加しているのだから、怪我をしたとしても原則的に自己責任であると考えられているのです。

  ただし、故意にルール違反をして相手に怪我を負わせてしまった場合には、違法と評価され傷害罪の責任を負うと考えられています。

  スポーツのルールの中には、競技時間を制限したり、特定の行為を反則行為として制限するものがあります。そのようなルールがあるのは、怪我を防止するためとも考えられています。

3 今回の講演では、学校での部活やスポーツ少年団などで、子どもにスポーツを指導する顧問の先生やコーチといったスポーツ指導者に関わることを中心に話しました。

  もし、指導者の不適切な指導などで、指導している子どもに怪我を負わせてしまった場合、民事上は損害賠償金(治療費や慰謝料など)の支払義務を負い、刑事上は業務上過失傷害罪(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

  先ほど、スポーツで怪我をしても原則として自己責任だと述べましたが、自己責任と評価されるのは、体力、運動能力、技術があり、その競技から起こり得る危険性をしっかり理解している者が対象と言われています。

  例えば体力、運動能力、技術が未熟で、競技の危険性が十分にわかっていない子どもの場合には、自己責任とは評価されず、指導者が責任を負う場合もあるのです。

指導者には、スポーツ事故の危険を予測し、その危険を防止するための必要な指導を行う義務があるとされています。法律的には「安全配慮義務」という義務です。

  具体的には、指導を受ける子どもの健康状態を把握して指導を行うこと(熱中症にならない練習をさせるなど)、安全な環境のもとでスポーツをさせること(整地されていないグランドを利用しないなど)、指導者の監視下で指導を行うこと(幼い子どもが水泳をするときには目を離さないなど)、能力に応じた指導を行うこと(技術がないのに難しい技に挑戦させないなど)、準備行為や片付け行為にも気を付けること(念入りに準備運動をさせたり、用具の片付けのときに事故が起こらないよう指導するなど)などです。

  野球、サッカー、バレーボール、バスケットなど、学校やスポーツ少年団で行うスポーツは様々ですが、スポーツ指導者は、それぞれのスポーツの危険性を十分に理解し、指導している子どもに事故が発生しないよう適切な指導を行う義務があります。

  先日、栃木県で登山の訓練中の高校生らが雪崩に巻き込まれ、8人が死亡したという痛ましい事故がありました。

  ニュースや新聞では、「春山安全登山講習会」ということで、当初は登山をすることになっていたようですが、雪が強くなったため、雪をかき分けて進むラッセル訓練を行うことに変更したところ、雪崩に巻き込まれしまったと報道されていました。このとき、被害者の方は、遭難した場合、その位置を知らせる送受信器を持たされていなかったとのことです。

  この事故でも、先ほど紹介した主催者の安全配慮義務違反(雪崩を予見できたのか、予見できたのであれば下山させるなど危険を回避することができなかったのか)が認められるのかどうか、問題になってきます。

4 どんなに気を付けていてもスポーツ中に怪我をしてしまったり、相手に怪我をさせてしまうことがあります。

  そのようなときのために、保険に加入すること重要です。

  自分が怪我をしてしまったときの治療費が支払われる保険、そして相手に怪我をさせてしまったときの治療費などが支払われる保険、万が一のことを考えて、最低限はこの内容の保険に加入する必要があると思います。

  怪我をしないためには、体調が悪いときには絶対に無理はしないこと、自分の体の仕組みやスポーツにおける体の動きを勉強し、体の負担にならない動きをすることも必要です。

  怪我をしてしまったらすぐに応急処置ができるように救急セットを用意しておくなど看護体制を整えておくことも大切です。

5 今回の講演を行うにあたり、スポーツと法律問題についていろいろ調べ、私自身とても勉強になりました。

  今回のコラムでは触れていませんが、講演のときには、札幌ドームのファウルボール裁判の分析、スポーツにおける体罰やセクハラの問題なども話しました。

  機会があれば、スポーツと法律のことについての話すことができればと思っています。