弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 鍛冶 孝亮
2017.03.16

誠意って何かね

1.年末からBSで『北の国から』を再放送しており見ていました。

御存知のとおり『北の国から』には、名シーンがたくさんありますが、『北の国から ’92巣立ち』(後編)で、純がタマ子を妊娠させてしまい、五郎さんが上京して、タマ子の叔父叔母に謝罪するシーンも有名です。

純から知らせを聞いた五郎さんはすぐ上京します。その際、挨拶代わりにとかぼちゃを持参します。

五郎さんは、純の父親として、タマ子の叔父叔母に土下座をして詫びようとするのですが、タマ子の叔父からは、「あんたは誠意と言っているが、こちらにとっては誠意にとれない。誠意って何かね?」と言われ、追い返されます。

久々にこのシーンを見て、「誠意って何かね」という言葉が頭から離れなくなりました。

2.「誠意」とは、「私利・私欲を離れて、正直に熱心に事にあたる心。まごころ。」と定義されているようです(デジタル大辞泉より)。

弁護士の仕事をしていると、「誠意」という言葉は良く聞きます。

例えば、相手方に誠意が見られないとか、相手方より「誠意を示してほしい」と求められているなどです。

なお、反社会的勢力に属する人が、トラブルに不当介入し、「誠意を見せろ」と迫ってくることもあります。このときの誠意とは、金銭を支払えという意味ですが、直接そのような表現を使用すると、恐喝罪や強要罪などの犯罪行為になってしまい、それを防ぐために、「誠意」という言葉で置き換えているにすぎません。

  「誠意とはなにか」というセリフを聞いて、仕事上でもよく聞く「誠意」とは何かを考えてみました。

3.誠意の一般的な定義は、前述したとおりですが、実際には誠意を示さなければならない場面に応じて、どのような行動をとることが誠意を示すことになるのかを考える必要があると思います。

  一番理解しやすいのは、誠意を示してほしいと求める立場になって考えて、行動するということでないでしょうか。

  例えば、交通事故を起こして怪我をさせてしまった場合、自動車保険に入っていて治療費などは保険会社が支払い、損害賠償の交渉も保険会社が代行してくれるからといって、加害者が何の謝罪も行わないというのであれば、被害者は不満に思うはずです。損害賠償の交渉は保険会社に任せるにせよ、加害者は怪我をさせてしまったことをしっかり謝罪し、被害者の怪我のことを本気で心配し、お見舞いをして快方を心から願う、ということを被害者が求めると思います。このような行動をとることが誠意を示すということになると思います。

  『北の国から』ドラマでも、五郎さんは、タマ子の叔父より、娘の蛍が同じような目にあった場合のことを本気で想像しろ、と言われるシーンもあります。

  ドラマの場面ですが、五郎さんと純が謝罪に行く前に、「謝ろう」、「謝れば許してくれるだろう」とやり取りをしているシーンもあります。ところが、タマ子の叔父に、そのような軽い考えがあることを見透かされてしまったのではないかと思います。そのため、タマ子本人やその家族の立場になって真剣に考えることを求められている場面だと感じました。

4.弁護士の仕事をしていると、相手方に誠意が見られないことで、トラブルになっていることも多いです。

先ほども紹介しましたが、例えば交通事故の案件では、加害者は事故直後に謝罪しただけで、お見舞いにも一切来ず、誠意が見られないと発言される被害者の方もいらっしゃいます。

  加害者の保険会社の対応もおざなりだったりすると、実際に示談するときもスムーズにいきません。被害者の方は、加害者や加害者の保険会社に不信感をもっているため、加害者側から示談の申出があっても、「はい、わかりました」と応じることができないのです。

  トラブルの発生当時に、相手方が誠実な対応をとっていれば、弁護士に依頼し、裁判で決着をつけることもなかっただろうと思った案件もあります。

  弁護士に相談される方の中には、相手方の誠意が見られないので、何とかしてほしいという内容で相談に来られる方もいらっしゃいます。

  法律で解決ということになれば、そのほとんどはお金で解決を図ることになります。相談される方が、相手方に誠意を見せてほしいと希望しても、相手方が負うべき法律上の義務は金銭の支払だけということになれば、その支払を行えば相手方は法律上の義務を果たしたとして、これ以上法律上は何も請求できない、つまり弁護士として何も手助けできなくなるということもあります。

  弁護士に相談される方の中には、誠実な対応をしてくれればお金などいらないという方もいらっしゃいます。その方の場合、相手方に法律上認められる支払をさせたとしても、相手方が誠意を示さなければ、最終的な満足を得られないのです。

  逆に、弁護士に依頼した後に、相手方が誠意を見せてくれたことで、「誠意を見せてもらったので、これ以上は求めません」と言って、和解で解決する場合もなくはありません。

  トラブルの発生原因やその解決には、誠意は深く関わっていると実感します。

5.弁護士は、相手方に誠意を見せるために活動することもあります。

  例えば、刑事弁護の場面です。

お店から商品を盗んだとして捕まった窃盗事件の場合、とにかく被害弁償ができるのかどうかを検討します。財産に関わる犯罪の場合、被害が回復されているのかが、刑の重さに大きく影響するからです。

確かに被害者の方にお金を全額返しさえすれば、特に謝罪をしていなくても、刑が大きく減軽されるかもしれません。

  しかし、被害者の方の立場に立った場合、盗まれたものを返してもらうのは当然であるという思いでしょうし、返してもらって「はい、わかりました」と納得できないのは当然だと思います。

  そこで、被疑者や被告人と話をして、お金を返すだけでなく、謝罪文も作成したほうがよいとアドバイスすることもあります。謝罪文の中で、犯行のことを謝罪するとともに、今後同じようなことをしないためにはどのように生活したらよいのかを、自分の言葉で語ってもらいます。

  被疑者や被告人が、被害者の方に誠意を示したいと考え、被害弁償の申出や謝罪文を作成したのであれば、弁護人として被害者に被害弁償を行ったり謝罪文を受け取ってほしいとお願いするのです。

  実際、謝罪文を作成しても受け取ってもらえない場合もなくはありませんが、謝罪文を作成することは、罪を犯した人が被害者の立場になって自らの犯行を反省し、再び悪いことをしないことに繋がるのではないかとも思っています。

6.『北の国から』のドラマでは、「誠意って何かね」と言われた五郎さんは、富良野に戻った後に、自宅を建てるために集めていた丸太を売ることを決意します。

 自由恋愛の結果の妊娠であり、しかも五郎さん自身の問題ではなく、息子である純が妊娠させたわけですから、お金を支払う法律上の義務はなかったかもしれません。しかし、五郎さんは、純の父親として、自分ができる誠意とはお金を支払うことだけだと考え、丸太を売った300万円から、未払代金の200万円を支払い、残りの100万円をタマ子の叔父宛に送ります。

ただし、このお金は受け取らず返ってきました。個人的には、タマ子の叔父はそもそもお金の支払を求めていたわけではないと思います。誠意とは何かを真剣に考えてほしいという話をされた後に、100万円という大金を用意して送った行為自体を五郎さんの誠意として理解してくれたではないかと思います。

誠意を示すというのは、本当に難しいことで、こちらとしては誠意を示していると思っていても、相手方にとってみれば誠意と感じられないということもあります。単に謝罪をすることが誠意なのか、謝罪とともに何らかの行動を示すのが誠意なのか、相手方が何を求めているのかを考える必要があります。また、相手方にも何らかの落ち度があった場合、素直に誠意を示すことができるのかという悩みもあります。

弁護士はトラブルを解決させる仕事ですし、トラブルの解決のためには、どのように誠意を示さなければならないのかを依頼者の方と考えていく必要もあります。

誠意という言葉を聞くたびに、「誠意って何かね」というセリフを思い出し、真剣に考えていきたいと思います。