弁護士法人 荒井・久保田総合法律事務所

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弁護士 荒井 剛
2017.02.02

司法アクセス改善に関する協定を締結!

本日(1月31日)、釧路市役所2階の市長応接室にて、釧路市、法テラス釧路、そして、釧路弁護士会との間で「釧路市司法アクセス改善に関する協定」調印式が行われました。釧路市からは蝦名市長、法テラス釧路からは今重一所長が出席し、そして、釧路弁護士会からは会長が所用のため出席できないとのことで副会長である私が出席してまいりました。調印式という名の通り、協定書にそれぞれ署名した上、三者で握手をして記念撮影をしました。

この模様は昼のNHK北海道ニュースでも取り上げられました。

http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20170131/3336531.html

(参照:NHK 北海道NEWS WEB 平成29年1月31日時点)

そもそも司法アクセスとは何かということですが「司法アクセス」という単語それ自体が使用されるというより、どちらかといえば「司法アクセス障害」という表現で使用されることが多いかもしれません。「司法アクセス障害」とは、たとえば弁護士の法律専門家に法律相談したいと思っても高齢や身体障がいのため外出すること自体が困難であったりする場合にはそもそも法律相談することもできず、司法にそもそもアクセス(接近・到達)できないといった状況のことを指したりします。

もともと弁護士の知り合いがいない、あるいは経済的理由から弁護士費用の支払が困難であり法律相談したくても法律相談もできないし、弁護士に依頼もできないといった場合も広い意味では「司法アクセス障害」に含まれるかもしれません。ただ、これについては平成18年に施行された総合法律支援法のもと「全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現」という理念を掲げる「法テラス」事務所が全国的に設立され(2016年9月現在で112地方事務所)、一定の場合には無料法律相談を受けることが可能となったり、弁護士費用を立て替えることができる「代理援助」制度が認められることになったため、広い意味での「司法アクセス障害」は一定程度改善されたとおもいます。

ただし、これはあくまで相談希望者が法律事務所や法テラス釧路の事務所に赴いて法律相談を受けるということが前提となっておりました。したがって、自ら積極的に外出することが困難な場合における「司法アクセス」は改善されないままになっておりました。

その間、法テラスでも弁護士会と協力して出張相談(一定の条件が必要)を実施することができる体制づくりをしてきました。そして、釧路弁護士会でも会内の高齢者・障がい者委員会のメンバーを中心に、地域包括センターごとに担当者をつけ地域包括センター等に寄せられた高齢者等からの相談に対応することができるよう少しずつ努力してまいりました。その効果もあり出張相談も徐々に増えており高齢者による「司法アクセス障害」が改善されつつあります。

しかし、これは本人が具体的に法律相談を希望していることが判明した場合に対応できる制度であり、それ以前の段階では機能しません。たとえば、認知機能が低下し、判断能力が衰えてきたため詐欺まがいの高額商品を買わされているという高齢者がいたとしても本人自身がその問題に気が付かなければ法律相談にもつながりません。気が付かないうちに多額の負債を抱え、さらに認知症の程度が進み自分自身で財産管理ができない状況に陥ったりしているケースもあります。身寄りがいないケースであればなおさらです。また、親族や知人がいたとしても高齢者である本人の財産を食い物にしているケースもあります。そのような場合、本人からの要望で法律相談を実施するということは難しいです。そのような場合でも近隣住民、民生委員あるいはケア・マネージャーが高齢者の異変を感じとり、この高齢者のためにどう対処すべきかを話し合うケース会議を開くことがあります。検討すべき事項は多岐にわたりますが、その中で、成年後見の申立、債務整理、消費者被害の救済制度の利用(クーリングオフなど)等、法律的な問題を含む問題に直面することが多いと思われます。そうであれば最初からこのようなケース会議に弁護士等の法律専門家が関われるようであれば高齢者支援という見地からは効率的です。しかし、このようなケース会議は「法律相談」そのものではなく、出張相談制度も利用することができません。そこで、今般、法テラス釧路では、釧路弁護士会と協力し、このようなケース会議にも弁護士を無償(弁護士の日当は法テラスが負担)で派遣することが可能な制度を試行的に運用するにしました。このような試行的運用をしている法テラス事務所は釧路を含め全国で3カ所にとどまっております。

これにより司法アクセス障害がさらに改善することになりましたが、ケース会議での検討を経たのち、当該高齢者に対し生活保護申請を行う必要があるという場合もあります。そのような場合にはスムーズに行政につなげる必要が生じますので行政の関わりは必要不可欠です。さらにいえば司法アクセス障害の問題は高齢者・障がい者だけではなく、児童虐待・DVの被害者にもあてはまります。そこで、これを機に、高齢者問題だけでなく、生活困窮者等の自立支援、虐待・DV等の問題も含め、広く司法アクセス改善に関する協定を釧路市役所交えて締結することになったということになりました。

もっとも、協定したからといってすぐに具体的な事業が市役所との間ではじまるわけではありませんが「釧路市」としてこのような協定を締結したということ自体、大きな意味があると思います。法テラスと釧路弁護士会がそれぞれ別に行っていた事業についても釧路市が介在することで相乗効果が期待され、より多くの法的ニーズに応えられることにつながるのではないかと思っております。そんなことを思いながら協定調印式に臨んできました。

以上